あらゆるビジネスにおいて、顧客の行動や目線、感情の重要性が再認識されています。顧客の理解が曖昧だと、自分たちのサービスがどのように顧客に受け入れられているのかが分からず適切なマーケティングやサービス改善ができません。
今回は、顧客の価値観や行動を理解してビジネスに活用するためによく使われる「カスタマージャーニーマップ」について、その作り方を解説してみたいと思います。サンプルとして作成したカスタマージャーニーマップはテンプレートとして配布していますので、ぜひダウンロードして活用してみてください。
目次
1.カスタマージャーニーマップとは
カスタマージャーニーとは、サービス・商品の典型的な顧客像(ペルソナ)における認知~リピートまでの動き(行動・思考・感情等)を指し、これを可視化したものをカスタマージャーニーマップといいます。ペルソナの動きを可視化することで、顧客の不満やニーズに気付いたり、顧客に対してアクションする適切なタイミングを把握することができるようになります。
従来、企業と顧客の接点は対面によるコミュニケーションが主流でした。現在は、メール・WEBサイト・SNS・アプリと顧客接点が多様化し、顧客に対して企業はアプローチがしやすくなっています。一方で、顧客からすると様々な企業から膨大な量の情報が寄せられるようになっており、適切なタイミング・内容で情報発信したり、サービスを提供しないと逆効果になりかねない状態となっています。
そのため、企業は顧客に対して一方的に商品・サービスを提供するのではなく、自社の顧客がどのようにサービス・商品を知り、どのように使っているのか、何を感じているかを把握することが求められています。
2.カスタマージャーニーマップの活用シーン
ビジネスにおいて、カスタマージャーニーマップを活用するシーンはたくさんありますので、代表的なシーンを2つご紹介します。
シーン1:マーケティングを高度化する
マーケティングにおいて顧客目線が重要であることはあらためて言うまでもないかと思いますが、多くの企業は成果を出すために自分たちの都合でマーケティング施策を実行してしまい、結果として成果につながらないことが多くあるかと思います。
例えば、ある商品の売上を上げるため、メールマガジン、Lineプッシュ、アプリ通知などのあらゆる自社の持つ顧客接点を使って広告を打ったとします。ロイヤリティの高い顧客はすべての接点に登録をしており、同じ広告を何度も受け取ることになりうんざりすることでしょう。
カスタマージャーニーマップを使うことで、情報を顧客に通知する効果的なタイミングやチャネルを確認したり、通知頻度や内容の改善ポイントの発見ができ、上記のようなケースを回避することが可能です。
シーン2:既存製品・サービス改善のヒントを得る
既にある製品やサービスの改善を検討する際にもカスタマージャーニーマップは有効です。顧客へのインタビューなどにより製品・サービスへの不満を直接聞いたうえで、なぜその不満を顧客が抱いているのかを感情面を踏まえて深く理解することが可能です。
例えば、あるレストランに対して顧客から「子供向けのメニューを増やしてほしい」という要望があった場合、カスタマージャーニーマップで来店前の顧客行動を可視化したとしましょう。小さい子供のいる家族の場合、レストランに小さな子供を連れて行ってもよさそうな雰囲気かどうかが気になるところです。そのため、レストランはWEBサイトなどに小さな子供を歓迎する旨を記載することで、子連れの家族を呼び込むことが可能となるでしょう。
3.カスタマージャーニーマップの作り方
カスタマージャーニーマップは目的によって様々な作り方があるのですが、簡単に作れるオーソドックスな手順を紹介いたします。
Step1:ペルソナを設定
まずはペルソナを設定しましょう。設定するペルソナは自社製品やサービスの顧客層の中で重要視する層をいくつか設定するのが良いでしょう。例えば、メインターゲット層のリピート率を高めたいのであれば、メインターゲット層(20-30代女性)の中から、20代と30代女性をそれぞれペルソナとして設定するようなイメージです。
ペルソナとして設定する項目は以下を参考にしてください。
- デモグラフィック:年齢、性別、居住地域、所得、職業、家族構成などの人口統計学的な属性
- サイコグラフィック:趣味嗜好、ライフスタイルや欲求などの心理的属性
- ビヘイビア:製品・サービスの購入頻度や目的などの行動属性
なお、ペルソナの粒度が荒すぎると総花的なカスタマージャーニーとなり、一般的にすぐ思いつくようなインサイトしか得られないケースがあります。また、粒度が細かすぎるとごく少数のユーザに対するインサイトが抽出され効果が薄くなってしまうようなケースに陥るため、目的によって適切な粒度のペルソナを設定するようにしてください。
今回は、サンプルとして以下のようなペルソナを設定してみました。
Step2:フェーズ(横軸)と顧客行動(縦軸)を決める
ペルソナを設定した後は分析対象のフェーズと顧客行動を決めます。横軸・縦軸の内容や細かさは、製品・サービスや得たい示唆の内容によって異なるため、実際にカスタマージャーニーマップを作りながら微調整していきましょう。
縦横の軸を決める際は以下の観点を意識するとよいでしょう
- 横軸となるフェーズは、製品であれば購入前後、サービスであれば利用する前後のプロセスを含めて設定しましょう。
例)認知→情報収集→比較→利用→共有、来店前→来店中→来店後 など - 縦軸は、実際の顧客行動に加え、顧客の感情の起伏やその理由が分かるように設定しましょう。また目的によっては、理想的な状態や自社のインサイトを顧客行動に紐づけて整理できるようにすると良いでしょう。
例)行動・感情・思考・インサイト、顧客接点・行動行動・感情・理想のUI・ビジネス課題 など
Step3:実際の顧客行動を把握・整理する
フレームができた後は実際に顧客行動を分析しながら整理していきます。この時、先入観なく、恣意的なカスタマージャーニーにならないように、可能な限りペルソナに近い顧客の実際の行動から整理する必要があります。自分自身がペルソナになりきって整理してみるのが一番簡単ですが、必要に応じて顧客へのインタビューやアンケートから情報を集めて整理することも検討しましょう。
Step4:カスタマージャーニーマップから感情の起伏の理由を分析する
カスタマージャーニーマップができたら、顧客の感情変化があった部分に着目してみましょう。感情の起伏があった前後には必ず理由があるため、そこを明らかにして改善のポイントや新たなサービスのヒントを得るようにします。
改善すべき点や新たなサービスアイデアがいくつも出てきた場合は、元々の目的に照らして優先度の高く、効果的なアクションを実行するようにしましょう。
4.カスタマージャーニーマップの事例
今回は「美容室のサービス改善」を目的として2パターンのカスタマージャーニーマップをご紹介いたします。
顧客行動と感情を詳細に表現
Step1で示したペルソナに対して、美容室に行く前後を含めた顧客行動・感情を詳細に分析してみたスライドです。各フェーズ毎に細かく顧客行動を表現し、対応する形で感情の起伏とその理由を表現しています。また、顧客の感情を高める(もしくは下げない)ために取りうるアクションをインサイトとして記載しています。現状のサービスに対して、細かい改善点などを洗い出す際にはこのようなフレームで整理すると良いと思います。
理想的なUXと自社の課題を表現
こちらのスライドでは、デモグラレベルの粗めのペルソナに対して、理想的なユーザ体験と現状とのギャップを対比する形で表現してみました。また、最下段には具体的なアクションではなく、自社として取り組むべき課題を並べて表現しています。理想と現状を対比、解決すべき課題を明らかにして、幅広いアクションを検討する際にはこちらのフレームを活用いただくと良いと思います。
5.ダウンロード
今回紹介させていただいたスライドは以下からダウンロードしてご利用ください。社内利用の企画書、顧客向けの提案書等に個人・商用目的ともに無料でご利用いただけます。また、カスタマイズもご自由にいただけます。
※個人情報の入力は不要です。 クリックするとファイルがダウンロードされます。おわりに
カスタマージャーニーを書くイメージはわきましたでしょうか。最近よく耳にする言葉ではあると思いますが、自分で書いてみると難しく時間がかかってしまうこともあるため、まずは配布しているテンプレートをベースにカスタマイズするなどで、徐々に慣れていただければと思います!