新規事業検討の際、その事業がどのくらいの売上を見込めるかの判断材料として、事業領域の市場規模を使うことがあります。市場規模を把握する方法はいくつかあるのですが、調べるにしても、試算するにしても少しコツが必要です。今回はこの市場規模の調査・試算方法を解説しつつ、事例も紹介したいと思います。
本記事で掲載しているスライドはダウンロード可能です。ぜひご活用ください!
目次
1.市場規模の調べ方
既に成立している市場であれば、官公庁や業界団体、民間調査会社が公表しているデータから市場規模を調べる方法が有効です。それぞれデータとしての特徴や有償無償などの違いがあるため、調べる内容に応じて使い分けていただくのが良いでしょう。
官公庁のデータを利用する
経済産業省、財務省などは所管する業界の統計データを提供しています。また、統計データを政府主導で可視化して参照できるサービスや「○○白書」という形で解説付きの資料も公開されているため、そちらも参照することをお勧めします。
- 経済産業省
「工業統計調査」、「商業動態統計調査」、「特定サービス産業動態統計調査」… - 中小企業庁
「中小企業実態基本調査」、「中小企業景況調査報告書」、「規模別製造工業生産指数」… - 総務省
「国政調査」、「消費動向指数(CTI)」、「経済センサス」… - 財務省
「法人企業統計調査」 - 地域経済分析システム(RESAS)
「移動人口の動向」、「決済データから見る消費動向」、「宿泊者数」… - 観光予報プラットフォーム
「観光予報」、「観光実績」、「外国人入出国データ」…
民間企業のレポート・サービスを利用する
官公庁のデータになかったり、詳細なデータが必要な場合、民間企業のレポートやサービスを利用するという方法があります。レポートを提供している代表的な企業として、矢野経済研究所、富士キメラ総研、ミック経済研究所があります。これらの企業が提供するレポートは高価であるものの、様々な業界のレポートがあり、各レポートも独自インタビューなどにより信頼性が高く詳細な情報がまとまっています。また、SPEEDAやstatista等の業界レポートをまとめて参照できる有償サービスなどもあるため使い分けましょう。
2.市場規模の試算方法
世の中にない新製品・サービスは、新たな市場を生み出すこととなるため市場規模に関する統計的な数値は調べても出てこないでしょう。また、知りたい市場がニッチだったり細分化されすぎていたりすると、該当する市場規模のレポートが存在しなかったりします。その場合は自ら市場規模を試算する必要があるため、その方法をご説明したいと思います。
フェルミ推定による試算
市場規模を試算する際によく使われる考え方として「フェルミ推定」があります。フェルミ推定とは、いくつかの真実を手掛かりにして、調査が難しい数値を概算する方法です。フェルミ推定による市場規模の試算は次のプロセスで行います。
- 市場規模を四則演算で表せる数式に分解する
- ざっくりとした統計値や概算値に検討をつける
- 数式に統計値や概算値を代入して推定値を導出する
試算例:国内タクシー市場規模
まず、タクシー市場を算出するための数式を考えます。
1日あたりの売上 × タクシーの台数 × 365日
続いて、試算で使う統計値や概算値を検討します。
デスクトップリサーチで統計値が得られた場合はその値を使い、得られなかった場合は概算します。
- タクシーの台数:98,250台
東京の駅数(655駅) × 1駅を起点にするタクシー台数(約50台) = 32,750台より
地方はタクシー利用率が低いものとして、東京の3倍が日本全国のタクシー台数と仮定 - 1日あたりの売上:40,000円
10時間 × 2回/1時間 × 2,000円 = 40,000
(稼働を10時間、平均乗車20分で単価2,000円、顧客獲得までの時間を10分として計算)
概算したタクシー台数、1日あたりの売上を数式に代入し、以下の概算値を導出
98,250台 × 40,000円 × 365日 = 約1.46兆円
※実際の国内タクシー市場規模は1.5~2.0兆円程度
3.市場規模を表現したスライド事例
今回は4つのパターンで市場規模を説明するスライドを作成してみました。それぞれのパターンで違った要素を入れたり、表現方法を変えたりしているので、ぜひ参考にしてみてください。
(1)市場規模の広がりにフォーカスした事例
市場規模を示しつつ、市場成長率が高いことを伝える際の事例として、リユース市場をサンプルにスライド化してみました。投資は中長期を見据えて実行されるため、現状の市場規模だけではなく、市場全体の成長率を示すことで判断しやすくなります。
(2)現状の市場と今後取り組む市場を表現した事例
続いて、今後拡大していく市場にフォーカスしたスライドです。この例では、中古貴金属を取り扱うリユース事業拡大の方向性として、「他種の中古品を取り扱うこと」を示しています。また、拡大するにあたって、活用するアセットを補足的に記載しています。
(3)各市場の拡大要因を説明した事例
こちらは、リノベーション住宅の市場規模を示しつつ、各市場が拡大する要因について補足したスライドです。補足部分に市場規模の試算前提となる計算式や統計値を記載するなどして、数値に説得力を出すような使い方もできると思います。
(4)市場規模が拡大することをアピールした事例
最後は、空き家のシェアリングエコノミーサービスの市場規模を題材に、市場規模が拡大することをアピールしたスライドです。現状は小さな市場であっても、将来的には急拡大する市場である場合にこのような見せ方をすると効果的に伝えたいことが伝わると思います。
4.ダウンロード
今回紹介させていただいたスライドは以下からダウンロードしてご利用ください。社内利用の企画書、顧客向けの提案書等に個人・商用目的ともに無料でご利用いただけます。また、カスタマイズもご自由にいただけます。
※個人情報の入力は不要です。 クリックするとファイルがダウンロードされます。おわりに
今回は市場規模の調査・試算方法と表現事例をご紹介させていただきました。企画書作成時などで役に立つと思いますので、ぜひ活用いただければと思います!
なお、新規事業企画書の書き方と実践例をこちらの記事で公開しているので、よろしければこちらもどうぞ!